しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術
泡坂 妻夫/著


★★★

私は普段推理小説は全く読まないので、物語自体はあまり好みではなかった。
しかしこの本の凄いところは、様々な意味で内容を超えたところにある。
筋書き+α。

作者の企てに気付いた瞬間息を呑んだ。
びっくりして急いでページを繰る。
ただただ作者に脱帽。
きっとこの小説を書くのには膨大な労力を費やしたことだろう。
でもちょっと楽しそうでもある。

とにかく普通の本じゃない。
普通と違う意味で、いつも持ち歩いていたい本である。
神様のボート
江國香織/著


★★★★

単純に自分に重ねて涙した。
暖かくて、ひんやりしてて、透き通っている小説。
母と娘の双方が語り手になっているから、
二人の成長や距離感の変化が明らかに分かって緊張する。

「神様のボート」って、残酷な表現だと思う。
岸に結ばれてはならない。ただ、あなたの元へ。
じゃああなたの元へ着いたら、ボートはどうなってしまうの。それは幸福なことなの?
私には、そうは思えなくて。現実が怖くて。

江國香織が好きになるなんて、私も女の子になってしまったのかもしれない。
ツレがうつになりまして。
細川 貂々/著


★★★★★

喫茶店で読んだにも関わらず涙がちょちょぎれて困った。
うつの人、うつの家族を持つ人、それぞれの気持ちが明るいタッチで描かれた漫画。
絵が可愛い。描写が面白い。分量は少ない。(だからうつの人も読みやすい。)
そして何より、中身が濃い。

うつってものが専門書なんかよりも分かりやすく、しかもリアルに描かれてる。
うつの当人は自分だけじゃないと知って安心できるだろうし
周囲で支えている人は心構えのヒントにすることができるだろう。

共感者を得たようなこの喜びは私の貧弱な言葉では伝え切れまい。
うつを理解してくれない人に出会って困ったら、黙ってこの本を差し出したい。
図解 「うつ」がわかって、「うつ」を治す本
菅野泰蔵/著


★★★★

これは分かりやすい、と紹介されて手に取った。
うつの本って易しめに書いてあったって、元気な人には難解なものが多いけれども
この本は言葉が平易だし丁寧に説明してあって理解しやすい。

図中の短い言葉がうつの心にはすごく響いた。ぐわ〜ん!
なんとなく痛いんだけどどこが疼いてるのか分からない私に、
傷はここだよって教えてくれているようだった。
傷に消毒液を垂らした時の、沁みるけど気持ちいいようなあの感覚?
その言葉は「まあ確かにね。でも、だから何?」と反感を覚えてしまう、
よくある癒しを目的とした軽い詩とは違う。
もっと地に足の着いたものだ。

うつの人、周りにうつの人がいる人は読んでみることをお勧めする。
白い犬とワルツを
テリー・ケイ/著、兼武進/訳


★★★

初めっから結末が予測できてしまうのが残念だが、結局最後は泣いてしまった。
お涙ちょうだい物語は嫌いだー!とか思いながらもやはりジーンとしてしまう。
暖かい雰囲気がそうさせるのだろう。

私には白い犬が見えるかな。
平面いぬ。
乙一/著


★★★★

乙一ってホラーものを書く人かと思っていたのだけれど、これは違った。
日常の中にある不思議な世界を、軽いタッチで描く。
透き通った暗がりを覗いている様な感じがする。
たまに思い出したいこの感覚。
ねじまき鳥クロニクル 第1〜3部
村上春樹/著


★★★

未熟な私は結局何も読み取れなかった。是非再挑戦したい。
あのシーンがなければ。
あまりのエグさに、本を遠めに持って目頭をつまみながら読み進めたあの場面。
そればかりが強烈な印象を放ち、真意が全く理解できなかった。

でも意味は分からないながらも心に残る描写がいくつもあって
たまに思い出しては気になってしまう。

小池真理子/著


★★★★

悲しかった。何故か目を背けたくて、均衡を破った男に無性に腹が立って。
最後を一気に読み終えた後、愛する人の死を想って、少しだけ泣いた。
1人の男と2人の女の、こんな奇妙で心地のいい関係は他に読んだことがない。
だからこそはらわたが煮えるのだ。

恋と憎しみ、安らぎと怒り、そんな相反する者たちが静かに同居する本。
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